第1回ワークショップ

第一回ワークショップでは秋田の現状を理解すると共に、持続可能性とはどういうことかについてゲスト講師2名の方に講話頂きました。

ゲスト講師:

齊藤英樹氏 (秋田県庁あきた未来創造部未来戦略課政策監)
「秋田県の人口問題と地方創生〜秋田はどうなっていくのか?〜」

工藤尚悟氏 (東京大学GPSS-GLIプログラム 助教)
「持続可能な地域社会について考える」

1. 「秋田県の人口問題と地方創生〜秋田はどうなっていくのか?〜」

「秋田県の高齢化率が日本全国一位」とはどのようなことを意味するのか。人口統計の推移、将来推計に関するデータを元に、秋田の未来を考えるにあたって秋田県ではどのような対策を講じているのか、またどのような将来展望を描かれているのか、説明いただきました。

日本は2004年に人口のピークを迎えてから、現在までは減少の一途を辿っており、その中でも最も人口減少率が高いのが秋田県である。1956年時点で135万人だった秋田県の人口は2019年9月時点で96.77万人となり、60年間で約40万人ほど人口が減っている状況である。

更に、2045年には秋田県の人口は60万人程になると推計されており、それは人口減少がこれまでの2倍のスピードで起きていくことを意味する。

また、人口減少は寿命と出生率低下による「自然減」と、様々な理由による県外への移住を意味する「社会減」の2つに大別され、そのうち「社会減」をいかに減らせるかがポイントであり、そのための取り組みを秋田県で行なっている。

県外への人口流出を減らすこと、また、他県からの移住を促すことが秋田県の将来にとって大事な取り組みとなることは明らかな一方で、それは必ずしも他県への進学や就職機会を否定するものではない。

若い人たちには、秋田を飛び出て、広い世界をみて学んでほしく、成長してから「戻ってきたい」と思ってもらえる秋田になれるかどうかが鍵である。

また、特に女性の人口が減っていることが出生率の低下等にも影響することから、女性にとって暮らしやすい町づくり、女性の就業機会を増やす取り組みが課題である。

秋田県の産業の活性化に関しては、航空機産業への参入サポートやICTの活用等に注力しているほか、若者の起業を応援する「チャレンジ秋田ドリーム事業」や、各自治体におけるコミュニティ生活圏の形成をサポートする取り組みも行なっている。

現在「第2期あきた未来総合戦略(仮称)」を策定しており、これまでの人口減少対策に加え、より広い世界の中に秋田の位置付けを捉え、SDGsや関係人口の増加についてもふれることとしている。

社会減対策は一定の目処が立ってきたので、今後は自然減対策にも積極的に取り組んでいく予定である。

2. 「持続可能な地域社会について考える」

秋田の「持続可能な」未来を考えるにあたって、どんな視点を持っているといいのか。ワークショップ後半は東京大学大学院・助教でサステイナビリティ学博士の工藤尚悟氏から持続可能性とは何か、そして都市でなく地域社会における持続可能性を考える際のヒントとなることをお話頂きました。

そもそも持続可能性、英語でいうサステイナビリティとは何か、それは「ある状態を下支えする能力のこと」である。

自然界における持続可能な状態とは、(画面にある)この水槽のような状態のことです。太陽(ここでは蛍光灯)の光が射し、光合成が起き、プランクトンが増え、生物が育つ、すなわちこの中で「芽吹き」「保全」「消滅」「再生」と4つのフェーズが循環し続けることが持続可能な状態である。

一方で、人間が暮らす「社会」におきかえて考えると、自然界にはない「消滅したくないという願い」をはじめとした人間にとっての「価値」が存在するため、水槽と同じようなモデルとはなりにくく、持続可能な状態となるには複雑な過程となる。そのため、縮小高齢化が加速する社会フェーズにおいては、「何をサステイナブルにしたいのか」の問いに立ち返りながら進んでいくことことが大切になってくる。

人口が増加し続けていた時代に大切だと思われていた「価値」と、人口が減っていく時代が大切に感じる「価値」は変化している。経済成長、生産性の向上、効率化の価値が高いとみられた時代から縮小高齢化していくフェーズにあたって、私たちは何を「豊かさ」と思うのか、人口減少に起因する地域社会の課題は多くある中で、どのようなビジョンを描いていくと良いのか、そのようなことを考えるための方法論として3つの手法で取り組んでいる。

1つ目が、「全然違うところに飛び込む」。

同じ状況にある似た者同士で話し合っていてもあまり面白い発想は生まれないが、全然違う者同士で交流できれば、新しい考え方に触れることができ創発が起きる。この手法を「トランスローカルアプローチ」と名付け、自分の研究では秋田県五城目町と南アフリカを行き来している。

2つ目は、「見方を変えてみる」。
少子高齢化はネガティブな文脈で語られることが多いが、逆の見方をすると、子ども一人に対して多くの大人が関わることができるということにもなる。

3つ目は、「世代を越えた通時的視点を取り入れる」。
将来世代に何を残したいのか、どのような価値を伝えていきたいのか、それを考える場として、AIUデザインLABを位置付けることができると思う。

3. まとめ

今回のワークショップは、人口問題をどのように捉えるか、そのなかで我々が何を豊かな社会と考えるのか、というテーマに取り組みました。

確かに秋田の人口は減少しているが、世界で最も少子高齢化が進む日本で、最も高齢化率が高い秋田は、新しい社会フェーズの最先端をいく地域と捉えることができる。新しい社会フェーズの「豊かさ」を問い直し、縮小高齢社会のデザインを行うことは楽しいことです。秋田発、縮小高齢社会の未来ビジョン考えていく、まずは自分にとって大切なものは何か、自分にとっての豊かさとは何か、このような内容をスピーカーのお二人から共有して頂きました。

第2回の「最新技術で未来を描く」では、先端技術トレンドについて学んでいきます。

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