第2回ワークショップ

第2回ワークショップでは、将来どのような技術が利用可能になるのかを理解し、より具体的な未来像を描くため、最先端技術トレンドについてゲスト講師2名の方に講話いただきました。

ゲスト講師:
河瀬誠氏 (有限会社MK&Associates 代表)
「最新の技術トレンドを知る〜外部環境の理解〜」

村山龍太郎氏 (Groove X株式会社 事業開発責任者)
「LOVOTご紹介」

1. 「最新の技術トレンドを知る〜外部環境の理解〜」

情報通信技術、人口知能(AI)をはじめ、様々な分野での技術革新が凄まじいスピードで起きています。こうした時代の変化は私たち一人一人の暮らし方、社会との関わり方にも多様な変化を及ぼしてきました。10年後、50年後にはどのような技術革新が起き、暮らしが変わっているのか。想像を膨らませるために、先端技術トレンドについて講話いただきました。

まずデジタル(情報処理技術)とAI(人口知能)についての話をする。日々進化し続けるデジタルテクノロジーの進化スピードは、AIという無限に学習し続けるテクノロジーが発明されたことで益々その勢いを増している。例えば昔は人間がロジックを設計し、プログラミングをしていたが、現在はAIが自らパターンを学習、認識することが可能となったため、顔認証技術や翻訳ソフトといった複雑な情報処理もAIによって瞬時に可能となった。AIとは、人間の子どものように学習し、自ら練習をするテクノロジーである。人間の子どもと違うのは、猛勉強を無限にできる、お勉強マシーンということである。

デジタル・AI技術の進歩によって、これまで人間が行なっていた多くの仕事がAIに置き換えられるようになる。まず、20世紀に起きた産業革命によってあらゆる労働が機械化され、肉体労働が減った。更に21世紀の技術革新がもたらすのはパターン化できるホワイトカラー業務の削減。例えば、マイクロソフト社が行なった実験で、パターン化できる業務について機械化を徹底したところ、それまで従業員3,000人必要だったところがたった1人で足りることが判明した。このように、パターン化される仕事は機械化が進むため、人間にはより付加価値の高い、複雑な仕事への対応力が求められるようになる。

次に自動車産業の変革をはじめ、我々の「移動」を取り巻くテクノロジー進化についての話をする。自動運転技術や環境負荷低減等、昨今の自動車産業は「100年に1度の変革期」と言われている。自動運転技術はAIを用いたパターンの無限学習によって可能となっており、実際の走行を通じた実験をどれだけできるか、その学習量の多さが実用化への鍵を握っている。自動運転技術が実用化されれば、人手不足や人件費を理由に廃止されてきたバス等公共サービスの再開、拡充といった面にも期待がされる。

また、自動運転技術のみならず、環境に優しく、且つ経済的にもフレンドリーな「エコロジーとエコノミー」の両方を実現する車の開発が急がれている。太陽光や風力といった自然エネルギーが主要電源に代わり、今後数十年のうちに発電燃料コストはタダになると言われている。そういった観点からも、EV車の普及は一気に加速することが予想される。更に、これまで車は「所有するモノ」として価値を付与されていたが、今後は所有よりそれが提供する「サービス」に付加価値が見出される時代となる。つまり、所有しなくてもスマホで呼べば車が来る、というサービスの快適さに利用者が価値を見出していくということである。「モノ」を所有することに価値が見出されていた過去に対し、これからは「自己実現」を可能とするサービスに価値が見出される時代になった。個々の「自分らしい生活をしたい」という欲求に如何に対応していくか、「自己実現産業」への転換が問われている。

「自己実現産業」の具体的提案として、観光業に注目している。一定水準の基本的欲求を満たされた我々は、より高次の欲求を満たすために旅行や教育といった自己投資にお金をかけるようになった。そうした潮流を受け、現在観光は世界最大の産業と言われている。そういう意味で土着の風土や文化が豊かな日本は大変有利な立場にある。秋田についても、地元の視点からはこんなところ何もない、と思いがちだが、外の視点から見ると魅力が多々ある。外からの視点をうまく取り入れ、地元をアピールしていくことが産業の活性化にとって重要である。

デジタル時代における変化のスピードは凄まじい。変化が著しい時代において、直線的な戦略や予測はあまり意味を持たない。なぜなら、技術革新がある点で突如として起き、一気に状況が変わってしまうから。それならば、現状を起点に将来を考えるのではなく、未来は大きく変わっていることを大前提に、未来を想像することが必要となっている。

2. 「LOVOTご紹介」

AIを含めあらゆる先端テクノロジーを用いて開発された”LOVOT”(ラボット)について、Groove X株式会社の事業開発責任者、村山氏にお話いただきました。講話中は2匹のLOVOTが会場内を自由自在に動き回り、参加者の注目の的となりました。

Groove X株式会社は2015年11月に創業した。スタートアップながら多くの企業から投資を受けロボット事業に取り組むことができ、家族型ロボット”LOVOT”を今年の12月から販売開始する予定である。従来のロボット事業は業務効率化を通じて人間の生活を豊かにすることを目的としてきたのに対し、LOVOTが追求するのは人に寄り添い、人の心を豊かにするということであり、人間の「幸せ」にダイレクトに取り組むことをミッションとして開発されたロボットである。このコンセプトの背景には、人は絆を感じるとオキシトシンというホルモンが分泌され、安心感や幸福感が上昇する、という科学的な根拠がある。LOVOTはこうした幸せを感じるホルモンの分泌を促し、愛着を形成する仕掛けを幾つも取り入れている。

愛着形成にアプローチするため、敢えて言語は使用せず、スキンシップ重視のデザインとしている。また、触り心地の良さや、ぬくもり、アイコンタクトといった細部に至るまで工夫がされている。更に、機会学習を行うことで人の顔を認識することや、頭の中に地図を描き、自らの行動範囲を把握することができるようになっている。部屋の中を自由自在に動き回ることができるため、遠隔操作で留守中の家の様子を記録したり、子どもの見守り等に役立てることもできる。また、頭の中に地図ができているので、自ら充電機に戻ることが可能である。

家庭でのパーソナルな使用の他、LOVOTはいろいろな場面で活躍できると想定されている。例えば、介護、医療、教育といった現場で役立つことができると考えている。実際にデンマークの老人ホームにて実証実験を行なったところ、LOVOTと触れ合った入居者には笑顔が多く見られるようになったなど、一定の効果を示す結果が得られている。

他にも、認知症の患者さんからの反応が良好であったり、教育現場では子どもたちにとって新しい学習機会になると受け止められている。感情を交流させることから育まれる癒しや学びの体験が今の社会では求められているということがわかってきた。高齢化による人材不足や孤立といった社会課題の解決にLOVOTが役立てられる可能性も十分あり、今後は会社としてもそういった場面での活用について更に検討を進めていく構えである。

ロボット事業は日本の産業界にとって鍵となる新産業である。「効率」の次に求められているサービスは何かということを、新しい価値が求められている今の世の中で追求しながら、まずは孤立に対する一つの策としてLOVOTを社会に広めていきたい。

3. まとめ

第2回ワークショップでは最先端技術トレンドについて学習し、未来を描くには未来から想起することが不可欠であるということを学びました。また、LOVOTについて知り、実際に触れたことで、先端技術が可能とする現実の実感を得る機会になりました。今の常識では考えつかないような未来があっても不思議ではないということ、技術革新が加速し続けるからこそ、人間らしい五感を伴う営みに価値が見出されていく、このようなことをゲストスピーカーのお二人から共有いただきました。

ワークショップの終わりには、「2050年のある朝、私の目の前にどんな景色が広がっているか?」という問いが参加者に投げかけられました。次回ワークショップ(12月7日、土曜日)では秋田の未来を描くため、「こうなったらいいのに」という願いを共有するアクティビティを行います。

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